複数の入居者が同じ日にまとまって施術を受ける施設向け出張美容室では、理美容師個人の衛生管理(消毒・健康診断)に加えて、施設内の感染対策の枠組みとの整合も論点になります。厚生労働省老健局は「介護現場における(施設系・通所系・訪問系サービスなど)感染対策の手引き」を公表しており、外部からの訪問事業者を受け入れる施設に向けて、標準予防策(スタンダードプリコーション)の遵守や、発熱・体調不良のある入居者への対応、面会者・外部業者の体調確認といった運用の考え方を示しています。出張美容室の実施日についても、施設内で感染症の発生・疑いがある場合は延期を検討する、施術前に理美容師・入居者双方の体調確認を行う、といった対応を、施設の感染対策担当者と事業者側であらかじめすり合わせておくことが望ましいでしょう。
もう一つ施設が見落としやすいのが、入居者の個人情報の取り扱いです。出張美容室の運営にあたっては、氏名・居室・希望する施術内容・過去の施術履歴といった情報を事業者と共有する場面が生じます。厚生労働省が公表する「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」は、介護サービス事業者が業務の一部を外部委託する場合や、外部の事業者に施設内で施術等を行わせる場合について、個人情報の取扱いに関する契約や合意を取り交わし、適切な取扱いがなされているかを定期的に確認することを求めています。施設が出張美容室を導入する際は、入居者名簿や施術希望リストの共有範囲、利用終了後のデータ廃棄方法について、事業者との間で書面により取り決めておくことが望ましい対応です。
なお、認知症等により本人の同意確認が難しい入居者について施術の可否・内容を判断する場合は、家族や後見人等への確認体制を施設側で整えておく必要があります。この点は理美容事業者が単独で判断できる領域ではなく、施設のケアマネジメント担当者を含めた社内体制で対応すべき事項です。