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施設担当者向け:出張美容室の導入相談の使い方

Published
作成日: 2026年7月6日
Updated
最終更新日: 2026年7月7日

介護施設の担当者が出張美容室の導入を検討する際、誰にどう相談し、どんな手順で進めればよいかを、自治体保健所への事前相談から事業者選定・衛生管理確認・届出までの実務フローで解説するガイド記事。

01施設担当者向け:出張美容室の導入相談は「保健所への事前相談」から始める

施設担当者向け出張美容室の導入相談は、施設所在地を管轄する保健所への事前相談から始めるのが基本の使い方です。

美容師・理容師は本来、美容所・理容所以外の場所で施術できません(美容師法第7条・理容師法の同種規定)。ただし、特別養護老人ホームなど社会福祉施設に入所している方への施術は、政令で定める「特別の事情」に該当し、例外的に施設への出張が認められています。この例外の運用(届出が必要か、事前相談で足りるか、対象施設の範囲)は自治体ごとに異なるため、施設担当者が最初にすべきことは、事業者探しではなく「自施設の所在地を管轄する保健所に、出張美容室を導入したい旨を相談する」ことです。

本記事は、この事前相談から実際の導入までの具体的な手順を、施設担当者の実務動線に沿って整理します。仕組みそのもの(運営形態・確認ポイント)は「施設向け出張美容室の仕組み」で解説しているため、あわせて参照してください。

施設担当者向け出張美容室の導入相談5ステップ

02ステップ1:管轄の保健所(衛生指導課等)へ事前相談する

最初のステップは、施設が所在する都道府県・政令市の保健所(生活衛生・衛生指導を担当する課)への事前相談です。相談時に伝えるとスムーズな情報は次のとおりです。

  • 施設の種別(特別養護老人ホーム、グループホーム等の社会福祉施設。有料老人ホームは老人福祉法上の類型であり、社会福祉事業に該当するかは施設ごとに異なるため、保健所への相談時に個別の確認が必要です)
  • 対象者(入所者のみか、通所者・職員も含める予定か)
  • 実施頻度の見込み(月1回程度の定期開催か、不定期か)

出張理容・出張美容が認められる政令上の「特別の事情」は、社会福祉事業に該当する施設に入所・通所している方のうち、「自ら理容所・美容所に行くことができない者」「家族・介護者の援助があっても行くことができない者」に限られます。対象施設に入所しているというだけで全入居者が当然に対象になるわけではなく、通所者や自力で通える方は原則として対象外である点に注意してください。

この相談で、施設所在地の自治体が「出張理容・出張美容の届出」を必要とする運用か、届出不要で事前相談のみで足りる運用かが分かります。例えば群馬県は届出様式・有効期間(最長1年)を定めた届出制を取っていますが、神奈川県は届出不要で事前相談を推奨する運用です。この違いを施設側が把握しないまま事業者選定を進めると、後から届出漏れが発覚し実施が遅れる可能性があるため、必ず最初に確認してください。

03ステップ2:事業者の免許・資格を確認する

保健所への相談と並行して、依頼候補の事業者が保有する免許・資格を確認します。施設担当者が確認すべき項目は次の3点です。

  1. 理容師免許・美容師免許(国家資格)の保有と、免許証原本の提示が可能か
  2. 訪問福祉理美容師等の民間資格(日本訪問福祉理美容協会、全国福祉理美容師養成協会「ふくりび」等が認定)の保有有無
  3. 施設・高齢者向けの訪問実績(認知症の方・医療的ケアがある方への対応経験)

民間資格は法的な必須要件ではありませんが、高齢者への介助知識や施設特有の運営ノウハウを持つ事業者かどうかを見極める材料になります。国家資格の有無は法令上の必須事項、民間資格の有無は事業者の力量を判断する補助材料、という位置づけの違いを混同しないようにしてください。

04ステップ3:衛生管理体制を確認する

出張美容室であっても、美容所・理容所で施術する場合と同様の衛生上の措置が求められます。施設担当者が事業者に確認すべき衛生管理項目は以下のとおりです。

確認項目具体的な確認内容
消毒体制器具(ハサミ・くし等)を利用者ごとに消毒・交換しているか、専用の消毒機器を携行しているか
感染対策作業衣・マスクの着用、施設の感染対策マニュアルへの協力可否
応急対応応急薬品の携帯、施術中の体調急変時の対応フロー
従事者の健康管理年1回以上の健康診断受診に加え、結核・皮膚疾患等の有無を証明する概ね3ヶ月以内発行の健康診断書(証明書)を携行しているか
届出済証・免許証出張美容の届出済証(自治体が届出制の場合)、免許証原本の携帯

これらは自治体の通知(「出張理容・出張美容に関する衛生管理要領」等)でも求められている水準であり、施設側が契約前に確認しておくことで、実施後のトラブルを避けやすくなります。

05ステップ4:必要な場合は届出を行う(事業者主体・施設は協力)

届出が必要な自治体の場合、届出の主体は施設ではなく理容師・美容師(事業者側)です。ただし、施設側の協力が必要になる場面があります。

  • 届出様式に施設名・所在地・実施予定の記載を求められる場合がある
  • 施設が対象となる「社会福祉施設」に該当することを示す書類(入所定員・種別が分かる資料等)の提示を求められる場合がある
  • 複数の理美容師が交代で担当する場合、従事者一覧表の作成に施設側の情報提供が必要になることがある

届出の要否・様式・提出先は自治体ごとに異なるため、ステップ1の事前相談時に「施設側で準備すべき書類は何か」まで確認しておくと、事業者側の届出手続きがスムーズに進みます。

06ステップ5:施設内での実施体制を整える

保健所への相談・事業者の資格確認・衛生管理確認・届出(必要な場合)が済んだら、施設内での実施に向けて次の点を院内で調整します。

  • 実施場所(施術に適した換気・給排水・照明のある部屋の確保)
  • 実施日程(入所者の体調・行事日程との調整)
  • 対象者の同意確認(ご本人・ご家族への事前案内)
  • 医療的ケアがある方の対応可否(主治医・看護職員への事前確認)

医療的ケア(酸素療法・経管栄養等)がある方への施術可否は、本サイトおよび事業者側で断定できるものではありません。施設の看護職員・主治医に確認のうえ、対応可否を事業者と個別にすり合わせてください。判断に迷う場合は、施設の医療連携窓口(訪問看護ステーション・嘱託医等)に相談することをお勧めします。

07相談先の候補:業界団体という選択肢もある

「どの事業者に相談すればよいか分からない」という段階では、施設向けの訪問実績がある業界団体を相談窓口として使う方法もあります。

  • 一般社団法人日本訪問福祉理美容協会(JVBWA):訪問福祉理美容師の認定団体。同協会が主催する講習会の修了により認定される
  • NPO法人全国福祉理美容師養成協会(ふくりび):1995年設立、「赤木塾」「岩岡塾」等の独自の養成講座を展開し、施設からの依頼専用の問い合わせ窓口を持つ

両団体はそれぞれ独自の講習・認定制度を運営する別団体であり、これらは民間団体であるため、紹介を受けたからといって法令上の届出義務が免除されるわけではありません。あくまで「施設対応に慣れた事業者を探す入口」として活用し、実際の導入判断はステップ1〜5の手順に沿って進めてください。公開前に各団体の最新の認定制度を一次情報で再確認することをお勧めします。介護りびようさーちでは、施設契約への対応実績がある事業者を営業エリア・対応可能な状態から検索できます。

08確認事項1:費用負担と料金体系(介護保険は使えない点に注意)

出張美容室の費用は、介護保険の給付対象外であり、施設・利用者の全額自己負担が基本です。訪問介護(ホームヘルパー)が行う「身体整容」の一環としての整髪とは制度上の位置づけが異なり、出張理容・出張美容そのものを介護保険サービスとして給付する仕組みはありません。

料金体系は事業者ごとに異なりますが、一般的には「施術料金(カット等)+出張費」の組み合わせで設定されることが多く、出張費は移動距離や訪問人数によって変動します。施設担当者が見積もり段階で確認しておきたい項目は次のとおりです。

  • 基本料金に何が含まれるか(カットのみか、洗髪・顔剃り・整髪料等が別料金か)
  • 出張費の算定基準(距離制か、施設単位の定額か)
  • 複数名をまとめて依頼した場合の割引や定額プランの有無
  • キャンセル・日程変更時の取り扱い(体調不良による当日キャンセルが起こりやすいため)
  • 支払方法(施設が一括請求を受けるか、利用者ごとの個別精算か)

なお、一部の自治体では在宅の高齢者向けに独自の助成(利用券の配布等)を行っている例があります。ただし対象は在宅の要介護高齢者向けが中心で、施設入所者の費用負担を軽減する制度ではない場合が多いため、助成の有無・対象範囲は施設所在地の自治体(高齢福祉担当課)に別途確認してください。

09確認事項2:賠償責任保険への加入状況

施術中の思わぬ事故(皮膚の切創、薬剤による肌トラブル、備品の破損等)に備え、事業者が理美容業向けの賠償責任保険に加入しているかどうかは、契約前に必ず確認しておきたい項目です。

理美容業向けの賠償責任保険は、施術行為に起因して利用者の身体・財物に損害が生じた場合の賠償責任や、訪問先の設備を損壊した場合の賠償責任を補償する保険商品として、損害保険会社や理美容業の同業組合・共済制度を通じて提供されています。フリーランス・業務委託契約で活動する理美容師の場合、所属サロンの保険が適用されず個人での加入が必要になるケースもあるため、「事業者本人(または所属先)が保険に加入しているか」「補償の対象に出張・訪問先での事故が含まれるか」を具体的に確認してください。

施設側としては、この確認を契約前のチェックリストに加えることで、万一の事故発生時に責任の所在や補償の流れが不明確になる事態を避けやすくなります。保険証券の写しの提示を求める、契約書に賠償責任に関する条項を明記する、といった対応も有効です。

10確認事項3:訪問介護の「身体整容」との違いを理解しておく

施設担当者からよく出る疑問に「ホームヘルパーが行う整髪と、出張美容室の施術は何が違うのか」というものがあります。両者は制度上の位置づけが異なるため、整理しておきます。

訪問介護における身体整容は、日常生活上の必要な範囲で、目にかかる髪をヘアピンで留める、簡単な整髪をするといった行為を指し、原則として理容師・美容師の資格を持たない介護職員が行うことが想定されています。一方、カット(調髪)やパーマ、カラーリングといった理容・美容の業(技術提供)は理容師法・美容師法上の業務独占であり、資格を持つ理容師・美容師でなければ行えません。出張美容室は、この「業としての理容・美容」を提供するものであり、身体整容の延長として職員が代替できるものではない点を、施設内の職員向けにも周知しておくと運用がスムーズになります。

厚生労働省は平成29年の通知(生食衛発第313001号「在宅の高齢者に対する理容・美容サービスの積極的な活用について」)で、外出が難しい高齢者が理容・美容サービスを受けることについて、身だしなみを整えることによる心身のリフレッシュやQOL(生活の質)の維持・向上に資する取組であるとして、理容・美容の業界団体に積極的な提供を促しています。施設側がこの通知の趣旨を踏まえ、出張美容室を「単なる身だしなみの手入れ」ではなく、入所者の生活の質に関わる取組として位置づけて説明すると、施設内での理解を得やすくなります。

なお、施術の効果を特定の症状の改善や治療的な効能として説明することは避け、あくまで身だしなみを整える理美容サービスとしての範囲で案内してください。医療的ケアが必要な方への対応可否は本記事の対象外であり、施設の看護職員・主治医への確認が必要です。

11定期利用へ移行する際の運用体制の整え方

1回限りの単発導入から、月1回・隔月といった定期利用へ移行する施設も少なくありません。定期利用に切り替える際は、単発導入時に確認した事項に加えて、次のような運用面の調整が必要になります。

  • 担当理美容師の固定化:毎回同じ担当者が訪問することで、入所者の髪質・希望する髪型・介助上の注意点(麻痺側の有無、車椅子への移乗方法等)を引き継ぐ手間が減り、認知症のある方にとっても顔なじみの担当者の方が施術を受け入れやすい場合があります。担当者の固定が可能か、やむを得ず交代する場合の引き継ぎ方法(申し送り書の有無等)を事業者に確認しておくとよいでしょう。
  • 対象者リストの更新運用:入退所や体調変化により、対象者は月ごとに変動します。実施日の直前に施設側で対象者リストを確定し、事業者に共有するタイミングをあらかじめ決めておくと、当日の混乱を防げます。
  • 年間スケジュールとの調整:季節の行事(お花見会・敬老会・クリスマス会等)の前に合わせて実施日を設定したいという要望が施設側から出ることもあります。事業者の稼働状況によっては希望日に対応できない場合もあるため、年間の実施予定を早めにすり合わせておくと調整がしやすくなります。
  • 職員の立ち会い体制:施術中に体調急変等が起きた場合に備え、施術時間帯に施設職員(できれば看護職員)が近くにいる体制を確保しておくことが望ましいとされています。立ち会いが必須かどうかは事業者や自治体の運用によって異なるため、契約時に確認してください。

複数の事業者を併用する施設もありますが、その場合は衛生管理体制・免許確認・保険加入状況の確認を事業者ごとに行う必要があります。窓口を一本化したい場合は、施設側で比較表を作成し、確認事項を統一しておくと管理がしやすくなります。

FAQ

このガイドのよくある質問

自治体によって異なります。群馬県のように届出を必須とする自治体もあれば、神奈川県のように届出不要で事前相談を推奨する自治体もあります。まずは施設所在地を管轄する保健所(衛生指導課等)に確認してください。
届出の主体は理容師・美容師(事業者側)です。ただし届出様式に施設情報の記載や、施設が届出対象施設に該当することを示す資料の提示を求められる場合があるため、施設側の情報提供・協力が必要になることがあります。
本サイトおよび事業者側で対応可否を一律に判断することはできません。酸素療法や経管栄養等の医療的ケアがある方については、施設の看護職員・主治医に事前に確認し、対応可否を事業者と個別にすり合わせてください。
訪問福祉理美容師等の民間資格は法令上の必須要件ではありません。法令上必須なのは理容師・美容師の国家資格です。民間資格の有無は、高齢者施設への対応経験を見極める参考情報として確認するとよいでしょう。
ステップ1の保健所への事前相談で自治体のルールを把握したうえで、複数事業者に免許・資格、衛生管理体制、施設訪問実績を同じ項目で確認すると比較しやすくなります。介護りびようさーちの検索機能で、施設契約に対応している事業者を営業エリアから絞り込むことも可能です。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と事業所の資料を確認しながら更新します。

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