先に、要点をまとめます。
- 障害者手帳(身体障害者手帳・愛の手帳等)や重度心身障害者手当を受けている方向けに、訪問理美容の利用券・助成券を交付する自治体があります。江戸川区・世田谷区・目黒区・墨田区・足立区など、複数の区市町村で確認できます。
- 対象要件は「身体障害者手帳1・2級」「愛の手帳(療育手帳)1・2度」「重度心身障害者手当の受給」など自治体ごとに異なり、高齢者向けの介護保険関連の助成とは対象者の枠組みが別立てです。
- 年間の交付枚数は6枚程度、自己負担は1回800〜1,000円程度という例が複数の自治体で見られますが、金額・枚数は自治体によって差があり、お住まいの区市町村への確認が必須です。
「親は身体障害者手帳を持っているけれど、訪問理美容の助成って高齢者向けの制度しかないのでは」——そう思って調べるのをやめてしまったご家族もいるかもしれません。実は、訪問理美容・出張理美容の助成制度には、要介護認定を軸にした高齢者向けの枠組みとは別に、障害者手帳や重度心身障害者手当を軸にした枠組みが用意されている自治体が少なくありません。ただし、この制度は自治体ごとに名称も対象要件も交付内容もばらばらで、「うちの区にもあるはず」と思い込んで探しても、思うようなページにたどり着けないことがあります。この記事では、障害者手帳を軸にした訪問理美容の助成制度がどのような枠組みで運用されているか、実際の自治体の例を挙げながら整理します。なお、この記事で紹介する制度は、あくまで一部自治体の実例です。お住まいの自治体に同様の制度があるとは限らない点は、あらかじめお伝えしておきます。
障害者手帳を軸にした訪問理美容の助成制度とは?
身体障害者手帳・愛の手帳(療育手帳)の等級や、重度心身障害者手当の受給を要件に、訪問理美容の利用券・補助券を交付する制度です。
高齢者向けの訪問理美容助成制度の多くは、「要介護3〜5」のように介護保険の要介護度を対象要件の軸にしています(この整理は訪問理美容に自治体の助成はある?対象要件と申請の流れを制度から整理で詳しく扱っています)。一方で、障害者手帳を軸にした制度は対象者の考え方そのものが異なり、年齢に関わらず「身体障害者手帳1・2級」「愛の手帳(療育手帳)1・2度」を持つ方や、「特別障害者手当」「重度心身障害者手当」を受給している方を対象にしているケースが目立ちます。たとえば江戸川区の「福祉理美容サービス」は、東京都重度心身障害者手当・特別障害者手当を受給している在宅の方を対象に、出張サービスを受けられる理美容券を交付しています。世田谷区の「障害者訪問理美容サービス」は、身体障害者手帳1・2級または愛の手帳1・2度を持ち、寝たきりや座位が保てないなど障害が理由で理美容店での理髪等が困難な方を対象にしています。どちらも「介護保険の要介護度」ではなく「障害者手帳・手当の受給状況」を対象要件の軸にしている点が共通しています。
なぜ高齢者向けの助成と別枠になっているのか?
介護保険の給付対象と障害福祉サービスの給付対象は制度上別の枠組みのため、訪問理美容の助成も別々の担当課・別々の予算で運用されているからです。
日本の福祉制度は、65歳以上(または特定疾病により40歳以上)を主な対象とする介護保険制度と、年齢に関わらず障害の状態を対象とする障害者総合支援法等の制度が、それぞれ別の法律・別の予算で運用されています。訪問理美容の助成も、この制度上の区分に沿って、高齢者福祉の担当課(高齢福祉課等)と障害福祉の担当課(障害者福祉課等)が、それぞれ別の要綱・別の予算で実施しているのが実態です。江戸川区の制度でも「40歳以上で要介護4・5度認定の方は高齢者向けサービスが対象」という案内があり、年齢や要介護度によって案内される窓口が変わることが分かります。つまり、「高齢者向けの助成を調べたが見つからなかった」という場合でも、障害者手帳を持っている本人であれば、障害福祉の担当課の制度を確認する価値があります。逆に、障害者手帳は持っていないが要介護認定を受けている、という場合は高齢者向けの制度を確認する、という切り分けになります。
対象要件はどう確認すればいいか?
「手帳の種類・等級」「年齢」「在宅かどうか」「理美容店での施術が困難な理由」の4点を、お住まいの自治体の障害福祉担当課に確認するのが確実です。
障害者手帳を軸にした訪問理美容の助成は、自治体によって対象要件の書き方が異なります。世田谷区のように「身体障害者手帳1・2級または愛の手帳1・2度」と手帳の等級で区切る自治体もあれば、江戸川区のように「重度心身障害者手当・特別障害者手当の受給」を要件にする自治体もあります。さらに、いずれの自治体でも共通して求められるのが「ねたきりや座位が保てないなど、障害が理由で理美容店での理髪等が困難な状態であること」という実質的な要件です。つまり、手帳や手当を持っているだけでは足りず、外出して理美容店に通うこと自体が難しい状態であることも合わせて求められます。この要件は本人の申告だけでなく、申請時に状態の確認を求められる場合もあるため、まずは自治体の窓口に「対象になりそうか」を電話やオンライン申請フォームで相談してみるのが早道です。
給付内容(交付枚数・自己負担額)はどのくらいか?
年間6枚前後の利用券が交付され、1回あたり800〜1,000円程度の自己負担が生じる例が複数の自治体で見られますが、正確な金額・枚数は自治体ごとに確認が必要です。
江戸川区の「福祉理美容サービス」では、申請月に応じて最大年間6枚の福祉理美容券が交付され、出張サービスを受けた際に800円の自己負担が生じます(年度によって変更される可能性があります)。世田谷区の「障害者訪問理美容サービス」でも訪問理美容券が年6枚交付され、利用者負担は1回1,000円です。この2つの区の例を見る限り、「年6枚程度・1回数百円〜1,000円程度の自己負担」という水準感は近いものの、金額・枚数はあくまで各区の実例であり、他の自治体でも同じ条件とは限りません。介護りびようさーちでは制度の具体的な金額を断定的に案内せず、「自治体によって差がある」という前提のもと、お住まいの自治体の障害福祉担当課への確認を必ずおすすめしています。
利用の流れはどう進めればいいか?
「担当課に対象要件を確認する」→「申請して利用券の交付を受ける」→「協力店(登録事業者)に電話で日程を相談する」という3ステップが基本です。
障害者手帳を軸にした訪問理美容の助成制度は、多くの場合「利用券を先に交付してもらい、その利用券を使って協力店に依頼する」という流れになっています。江戸川区では「福祉理美容出張サービス加盟店に電話で日時等ご相談のうえ、お申し込みください」という案内があり、利用券を持って直接、登録された事業者に連絡する仕組みです。世田谷区でも協力店の一覧が公開されており、その中から選んで申し込みます。ここで注意したいのは、すべての訪問理美容事業者がこの助成制度の対象になるわけではないという点です。制度を利用したい場合は、まず自治体が公開している協力店・登録事業者の一覧を確認し、その中から事業者を選ぶ必要があります。介護りびようさーちで気になる事業者を見つけた場合も、その事業者がお住まいの自治体の協力店として登録されているかどうかは、別途事業者または自治体に確認することをおすすめします。この点については、後半でもう一度触れます。
出張のみが対象?店舗での利用はできる?
多くの制度で「出張によるサービスのみ」が対象で、理美容店に来店しての利用は対象外です。
江戸川区の制度説明では「出張によるサービスのみが対象で、来店時は利用できません」と明記されています。これは、この助成制度が「理美容店に通うこと自体が難しい方」を対象にしている以上、当然の設計とも言えます。もし本人が理美容店に通える状態であれば、そもそもこの助成制度の対象要件(理美容店での理髪等が困難な状態)を満たさない可能性が高くなります。このあたりの「対象になるかどうかの判断基準」は、後述する高齢者向け制度の対象判定基準の考え方とも重なる部分があるので、あわせて確認しておくと制度全体の理解が深まります。
高齢者向けの助成制度とは何が違うのか?
対象者の枠組みが「要介護度」か「障害者手帳・手当」かという点が最大の違いで、要件を満たせば両方の制度を使えるわけではなく、どちらか一方を選ぶ形になるのが一般的です。
すでに触れたとおり、高齢者向けの訪問理美容助成は要介護認定を軸に、障害者向けの助成は障害者手帳・手当の受給を軸にしています。では、要介護認定も受けていて、なおかつ身体障害者手帳も持っている、という方はどうなるのでしょうか。こうしたケースでは、自治体の窓口で「どちらの制度が使えるか」「重複して使えるのか、どちらか一方を選ぶのか」を確認する必要があります。江戸川区の案内で「40歳以上で要介護4・5度認定の方は高齢者向けサービスが対象」とされているように、年齢や要介護度によって適用される制度が自動的に振り分けられる自治体もあります。この振り分けのルールは自治体ごとに異なるため、「うちの場合はどちらに該当するか」を、ご本人の状況を伝えたうえで担当課に確認するのが一番確実な方法です。ここまで読んで「結局、自分の自治体はどうなのか」と感じた方も多いと思いますが、その疑問への一番早い答え方を、次の章でまとめます。
制度を調べるときに起きやすい行き違いとは?
「隣の区にある制度が自分の区にもあるはず」という思い込みと、「手帳を持っていれば自動的に交付される」という誤解の2つが、実際によく起きる行き違いです。
障害者手帳を軸にした訪問理美容の助成は、江戸川区・世田谷区・目黒区・墨田区・足立区など複数の区で確認できますが、これは東京23区の一部の実例であり、すべての市区町村に同じ制度があるわけではありません。SNSや知人からの話で「隣の市にはこういう制度がある」と聞いて、自分の自治体でも同じ制度があるはずだと思い込んで探しても、実際には制度自体が存在しない場合や、名称・対象要件が大きく異なる場合があります。もうひとつよくある行き違いが、「手帳の等級を満たしていれば自動的に利用券が届く」という誤解です。多くの自治体では、対象要件を満たしていても申請をしなければ交付されません。手帳の交付を受けたタイミングで案内が来る自治体もあれば、本人や家族が自分で申請窓口を探して申し込む必要がある自治体もあります。「対象のはずなのに何も届かない」と感じた場合は、まず自分から担当課に問い合わせてみることが必要です。
また、目黒区の「心身障害者(児)理美容補助券」や墨田区の「心身障害者理美容サービス(理美容師派遣)」のように、名称に「補助券」「派遣」など異なる言葉が使われている例もあります。検索するときは「訪問理美容 助成」だけでなく、「理美容補助券」「理美容師派遣」「福祉理美容」など、複数の言い回しで自治体のホームページを確認してみると、制度が見つかりやすくなります。
出張理美容の対象要件そのものを、もう少し広く知りたい場合は?
2026年3月の厚生労働省通知でも、出張理美容の対象となる考え方が整理されています。
障害者手帳を軸にした助成制度とは別に、そもそも出張理美容・訪問理美容という仕組み自体が誰を対象に想定されているのかを、厚生労働省の通知から整理した記事もあります。出張理美容は誰が対象になる?2026年3月の厚労省通知から対象要件を整理では、自治体の助成の有無にかかわらず、出張理美容という制度そのものの対象の考え方を扱っています。助成制度の対象要件と、出張理美容そのものの対象要件は別の話なので、両方を確認しておくと制度理解の抜け漏れを防げます。
事業者を探すときに確認しておきたいこと
助成制度の協力店になっているかどうかとは別に、届出・資格の有無や賠償保険の加入状況も、依頼前に必ず確認しましょう。
助成制度の利用を考えている場合でも、事業者選びの基本は変わりません。理容師免許・美容師免許を持つスタッフが施術すること、出張理容・出張美容の届出が保健所になされていることは、訪問理美容・出張美容を依頼するうえでの前提です。届出・資格の確認方法は訪問理美容師・美容師の選び方で詳しく整理しています。また、助成制度を使う・使わないに関わらず、訪問理美容・出張美容は介護保険の対象外の自費サービスであり、費用の仕組みそのものは変わりません。助成があっても全額が無料になるわけではなく、自己負担分は発生する、という前提で依頼を検討すると、当日の行き違いを防げます。費用の仕組み全体は費用の仕組み|訪問理美容・フットケアは自費サービスで整理しています。なお、訪問理美容・出張美容は医療的フットケア・口腔ケア・入浴介助を扱いません。障害の状態によっては、皮膚の状態や医療的なケアが必要かどうかの判断が必要になる場面もありますが、その場合はサイトや事業者が独断で判断せず、必ず主治医や訪問看護に確認するようにしましょう。
制度の調べ方をひとつの図で整理する
ここまでの内容を、対象者の枠組みから利用開始までの流れとして整理します。
- 手帳・手当の確認: 身体障害者手帳・愛の手帳(療育手帳)の等級、重度心身障害者手当・特別障害者手当の受給状況を確認する
- 担当課への相談: お住まいの自治体の障害福祉担当課に、対象要件・交付枚数・自己負担額を確認する
- 利用券の交付申請: 電子申請・来庁・郵送等、自治体が案内する方法で申請する
- 協力店への依頼: 自治体が公開している協力店・登録事業者の一覧から選び、電話等で日程を相談する
この記事で持ち帰れること
- 訪問理美容の助成制度には、要介護度を軸にした高齢者向けの枠組みとは別に、障害者手帳・重度心身障害者手当を軸にした枠組みを用意している自治体があるという事実
- 年間6枚前後の利用券・1回800〜1,000円程度の自己負担という例が複数自治体で見られるが、金額・枚数・対象要件は自治体ごとに異なるため、必ず窓口で確認するという原則
- 制度を使う場合は、自治体が公開する協力店・登録事業者の一覧から事業者を選ぶ必要があるという実務上の注意点
ここまで読んで「うちの自治体はどうなんだろう」と気になった方は、まずは今日、お住まいの区市町村のホームページで「障害者 訪問理美容」または「障害者 理美容 助成」で検索し、担当課の窓口番号だけでも控えておくことをおすすめします。実際に電話をかけるのはその後で構いません。まずは窓口を見つけておくことが、次の一歩を軽くします。
制度の対象要件そのものについては出張理美容は誰が対象になる?2026年3月の厚労省通知から対象要件を整理、高齢者向けの助成制度については訪問理美容に自治体の助成はある?対象要件と申請の流れを制度から整理もあわせてご覧ください。事業者を探す際は、地域・施術メニューから事業者を探す使い方のガイドもご活用ください。

