先に、要点をまとめます。

  • デイサービス(通所介護)の利用日に訪問理美容を組み合わせること自体は可能です。ただし介護保険の給付ではなく、通所介護のサービス提供時間とは別枠の「保険外サービス」として扱う必要があります。
  • 厚生労働省は2018年(平成30年)の通知で、通所介護の提供時間中に保険外サービスを組み込む場合の条件を示しています。通所介護をいったん中断し、保険外サービスを挟んでから再開するという考え方が基本です。
  • 施術そのものの対象要件(来所困難であること等)は、通所介護を使っているかどうかとは別の話です。デイサービスに通えている=外出できる状態でも、訪問理美容の対象になり得るかどうかは別の記事で整理した基準で判断します。

「母がデイサービスに通っているのですが、その日のついでに髪を切ってもらうことはできますか」——介護りびようさーちに寄せられる質問の中で、施設の担当者からもご家族からも、実はよく出てくるのがこの相談です。デイサービスに通所していると、わざわざ別の日に在宅で訪問理美容を頼むよりも、通所日に合わせられたら効率がいいと考えるのは自然なことです。この記事では、通所介護と訪問理美容を組み合わせるときに、制度上どういう扱いになるのか、厚生労働省の通知をもとに整理します。なお、記事の後半で、通所介護の利用日以外に在宅で依頼する場合との違いにも触れます。どちらが向いているかは、施設の運用体制によって変わってくる部分です。

デイサービスの利用日に訪問理美容を頼むことはできるのか?

できます。ただし介護保険サービスとしてではなく、通所介護とは別枠の「保険外サービス」として提供する必要があります。

まず前提を整理します。通所介護(デイサービス)は介護保険の給付サービスで、入浴・食事・機能訓練・レクリエーションなどが提供時間の中に組み込まれています。理容師・美容師による散髪やカットは、この介護保険の給付対象サービスには含まれていません。訪問理美容・出張美容は、費用の仕組みそのものについて訪問理美容・フットケアは自費サービスという費用の仕組みで整理しているとおり、介護保険とは別枠の全額自費サービスです。

この「別枠」という位置づけが、デイサービスの利用日に組み合わせる場合にも同じように当てはまります。厚生労働省は2018年(平成30年)9月28日付の通知「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」で、通所介護のサービス提供時間中に保険外サービスを組み込む際のルールを示しました。この通知が、デイサービスの日に訪問理美容を依頼できるかどうかを考えるときの土台になります。

なお、この記事は「通所介護の利用日と組み合わせられるか」という運用面を扱うもので、訪問理美容そのものが誰を対象にしたサービスかという制度上の対象要件は、出張理美容は誰が対象になる?2026年3月の厚労省通知から対象要件を整理で解説しています。デイサービスに通えている状態と、出張理美容の対象になるかどうかは、判断の軸が別であることは先に押さえておいてください。

通所介護と保険外サービスは、どういう順番で組み合わせるのか?

基本の考え方は「通所介護をいったん中断し、その間に保険外サービスを提供して、終わったら通所介護を再開する」という形です。同時並行で提供するものではありません。

2018年の厚生労働省通知は、通所介護の中で保険外サービスを提供する際の考え方として、次のような枠組みを示しています。

  • 通所介護のサービス提供をいったん中断したうえで保険外サービス(訪問理美容など)を提供し、その後引き続いて通所介護を提供することが可能であること
  • 保険外サービスの提供時間は通所介護の提供時間には含めず、その前後に提供した通所介護の提供時間を合算して介護報酬を算定すること
  • 保険外サービスを利用するかどうかは利用者の自由な選択によるものであり、強制してはならないこと
  • 保険外サービスの内容・費用について、あらかじめ利用者・家族に説明し、同意を得ること
  • 保険外サービスにかかる費用は通所介護の利用料とは別に、区分して請求すること
  • 事前に担当のケアマネジャーへ内容を報告すること
  • 判断能力が十分でない利用者に対して、不必要に高額な契約を結ばせないよう配慮すること
  • 保険外サービスに関する苦情の受付窓口を用意しておくこと

つまり「デイサービスのプログラムの合間に、こっそり施術を挟む」というような扱いではなく、施設側が意図的に運用ルールを整えたうえで提供する、明確に区分されたサービスという位置づけです。訪問理美容の事業者を呼ぶ施設は、この考え方に沿って「何時から何時までは通所介護、その間の何分間は保険外の理美容サービス」という時間割を組んでいることになります。

通所介護の提供時間中に訪問理美容を組み込む際の考え方。通所介護を提供→いったん中断して保険外サービスの理美容を提供→通所介護を再開という3段階の流れと、その下に「時間は合算して算定」「費用は区分して請求」「事前にケアマネへ報告」という3つの条件を示した図

なぜ「中断してから再開する」という形にする必要があるのか?

通所介護の介護報酬は、あらかじめ決められたサービス内容の対価として支払われるものだからです。保険外のサービスをその中に紛れ込ませると、給付の範囲が曖昧になってしまいます。

介護保険の給付は、公的な財源から支払われるお金です。そのため「どこまでが保険の給付対象で、どこからが利用者の自己負担なのか」という境界を明確にしておくことが、制度の大前提になっています。もし訪問理美容の時間をそのまま通所介護の提供時間に含めてしまうと、本来は自費であるはずのサービスの費用が、実質的に介護報酬でまかなわれているような状態になりかねません。

「いったん中断して、保険外サービスを挟み、また再開する」という形式は、この境界をはっきりさせるための工夫です。中断中は通所介護のサービス提供とはみなされないため、その時間帯に理美容の施術を行っても、介護報酬の算定には影響しません。そのうえで、中断の前後にあった通所介護の提供時間を合算して、通常どおり介護報酬を算定する、という整理になっています。

この考え方を理解しておくと、施設が「なぜわざわざ理美容の時間だけ別扱いにするのか」という理由が見えてきます。単なる事務手続き上の形式ではなく、公的財源で運営される介護保険サービスと、利用者が自分の意思で選ぶ自費サービスを、制度的に区別するための仕組みだということです。

この「いったん中断して、前後の時間を合算する」算定方法は、現場では「中抜き」算定と呼ばれることもあります。三重県長寿介護課が公開している整理(「通所介護のサービス提供中の行為と介護報酬の扱いについて」令和元年7月)でも、理美容サービスはこの中抜き算定に該当する行為として例示されています。保険者(市区町村)によって具体的な運用の確認が必要な場合もあるため、迷ったときは施設が加入する保険者へ確認するのが確実です。

施設が訪問理美容を導入するときに、実務で気をつけることは?

ケアマネジャーへの事前報告、利用者への説明と同意、費用の区分請求の3点は、後から追加するのが難しい手続きなので、導入前に仕組みとして組み込んでおくのが安全です。

実際に施設が訪問理美容を通所介護の利用日に組み込む場合、事務的に押さえておきたいポイントがいくつかあります。

まず、ケアマネジャーへの事前報告です。通所介護の利用者は、それぞれ担当のケアマネジャーがケアプランを作成しています。保険外サービスをどのタイミングで、どのくらいの頻度で組み込むかは、ケアプラン全体の中での位置づけにも関わるため、施設側から一方的に決めるのではなく、事前にケアマネジャーへ内容を伝えておく必要があります。施設と訪問理美容事業者、ケアマネジャーとの連携の考え方はケアマネジャー・施設スタッフとの連携でも整理しています。

次に、利用者・家族への説明と同意です。保険外サービスは利用者の自由な選択によるものであり、強制してはいけないとされています。「デイサービスの日に理美容もセットで行います」と一方的に案内するのではなく、利用する・しないを選べる形にしたうえで、内容と費用について説明し、同意を得るプロセスが必要です。施設単位で導入する際の手順は施設が出張美容室を導入するまでの流れにまとめています。

そして、費用の区分請求です。通所介護の利用料と、訪問理美容の施術料は別会計にする必要があります。複数の入居者・利用者をまとめて依頼する場合の費用の考え方は複数人まとめて依頼したときの費用の考え方(施設向け)を参考にしてください。

これらはどれも、後から「実はやっていなかった」と気づいて慌てて整えるのが難しい種類の手続きです。訪問理美容を初めて導入する施設は、事業者を選ぶ段階から、こうした運用ルールに理解のある事業者かどうかを確認しておくと、導入後のやり取りがスムーズになります。事業者選びの視点は訪問理美容師・美容師の選び方で詳しく解説しています。

施設としてゼロから出張美容室の導入を検討している場合は、この記事で扱った通所介護との組み合わせ方に加えて、契約から初回施術までの手順全体を把握しておくと進めやすくなります。実務的な手順は施設が出張美容室を導入するまでの流れにまとめています。

導入前によくある行き違いには何があるか?

「理美容の時間も介護報酬に含まれると思っていた」「同意を取らずに全員一律で予定を組んでしまった」という2つの行き違いが目立ちます。どちらも導入初期に起きやすいものです。

施設が訪問理美容をデイサービスの利用日に組み込もうとするとき、実際によく起きる行き違いをいくつか挙げます。

ひとつは、費用の扱いを取り違えるケースです。「通所介護の利用料の中に理美容の費用も含まれている」と誤解したまま案内してしまうと、後から利用者・家族に別途請求が発生することへの説明がつかなくなります。上記で見たとおり、理美容の費用は通所介護の利用料とは区分して、別途請求する必要があります。契約時・案内時の書面で、通所介護の利用料とは別枠であることを明記しておくと、こうした行き違いを防げます。

もうひとつは、利用者の同意を確認せずに一律で組み込んでしまうケースです。保険外サービスは利用者の自由な選択によるものであり、強制はできません。「今日はデイサービスの日だから、全員まとめて散髪の予定です」という運用にしてしまうと、施術を希望しない利用者の意思が反映されない形になってしまいます。事前に希望を確認し、希望しない利用者は通常どおりのプログラムを続けられるようにしておく必要があります。

3つ目に、ケアマネジャーへの報告が漏れるケースもあります。施設と訪問理美容事業者の間だけで日程を決めてしまい、ケアマネジャーへの報告が事後になったり、抜け落ちたりすることがあります。ケアプラン全体を管理しているのはケアマネジャーであるため、定例のカンファレンスや報告の機会に合わせて、理美容サービスの導入予定を伝えておくと、後からの行き違いを防げます。

これらはいずれも、悪意があって起きるというより、「介護保険のサービスと保険外サービスの境界線」という考え方そのものに施設側が不慣れなために起きるものです。訪問理美容の事業者側も、こうした施設向けの説明資料を用意していることがあるため、導入時に相談してみるとよいでしょう。

通所介護の時間割の中で、理美容の時間はどう組み込むのか?

入浴前後や、レクリエーションの時間帯に組み込む施設が多く見られます。ただし個々の利用者の体調や、その日のプログラムとの兼ね合いで調整が必要です。

通所介護の1日の流れは、送迎、健康チェック、入浴、食事、機能訓練、レクリエーションといったプログラムで構成されています。この中に理美容の時間をどう差し込むかは、施設ごとに工夫のしどころです。

洗髪を伴うカットであれば、入浴の前後に組み込むと、利用者の身体的な負担が少なく済む場合があります。レクリエーションの時間帯に組み込み、順番を待つ間も他の利用者と過ごせるようにする施設もあります。いずれの場合も、当日になって急に決めるのではなく、あらかじめ日程と時間帯を決めて、利用者・家族・ケアマネジャーに周知しておくことが前提になります。

複数の利用者が同じ日にまとめて施術を受ける場合、待ち時間や順番の決め方、体調が優れない利用者が出た場合の予備日の考え方など、実務的に整理しておきたい点は多くあります。この日程調整の実務は施設で訪問理美容の日程を組むポイントで詳しく取り上げているので、実際に運用を組み立てる段階になったらあわせて参考にしてください。この記事では「そもそも組み合わせてよいのか、制度上どういう扱いになるのか」という土台の部分を中心に説明しています。

なお、通所介護の利用者の中には、寝たきりに近い状態の方や認知症のある方も含まれます。施術の進め方そのものについては、寝たきりの方への訪問理美容、当日はどう進む?認知症の方が散髪を嫌がるときはどうする?も参考になります。ただし、褥瘡の処置や経管栄養・酸素療法中の医療的な管理が必要な場面は、通所介護の利用日であるかどうかに関わらず訪問理美容の対象外です。医療機関・訪問看護へ相談してください。

在宅での訪問と、デイサービス利用日での訪問はどちらが向いているのか?

在宅で暮らしながら定期的にデイサービスへ通っている方であれば、通所日に組み込む方が、ご家族の付き添いの負担が減る場合があります。ただし施設側の受け入れ体制が整っていることが前提です。

在宅で訪問理美容を依頼する場合、施術の準備(タオルやお湯の用意など)や、当日の見守りをご家族が担うことになります。一方、デイサービスの利用日に組み込める場合は、施設のスタッフが受け入れ体制を整えてくれるため、ご家族が毎回立ち会う必要がなくなる、という利点があります。特に、遠方に住むご家族が本人の身の回りを整えたいと考えている場合、通所日に合わせられるかどうかは大きな違いになります。

一方で、すべてのデイサービス施設が理美容の受け入れ体制を整えているわけではありません。上記で見てきたとおり、ケアマネジャーへの報告、利用者への説明と同意、費用の区分請求といった手続きを施設側が整えている必要があるため、「通っているデイサービスで対応してもらえるか」は、まず施設に確認することが出発点になります。対応していない場合は、在宅での訪問を別途依頼するか、施設に導入を相談するかを検討することになります。施設側への相談の進め方は施設担当者向け:出張美容室の導入相談の使い方にまとめています。

在宅とデイサービス利用日、比較すると何が違うのか?

準備の負担と、頼める頻度の柔軟さがおもな違いです。どちらか一方に決める必要はなく、状況に応じて併用している家庭も多くあります。

これまで見てきた内容を、在宅での依頼とデイサービス利用日での依頼で比べると、次のような違いになります。

比較する観点在宅での訪問理美容デイサービス利用日での組み込み
依頼できる頻度・日程家族の都合で自由に設定できる施設の通所スケジュールと、施設側の受け入れ体制に左右される
当日の準備家族がタオル・お湯などを用意する必要がある施設のスタッフが準備を担うことが多い
立ち会い家族が立ち会うか、事前に依頼内容を細かく伝えておく必要がある施設スタッフが見守るため、家族が毎回立ち会わなくてよい場合が多い
費用の請求事業者から家族へ直接請求される通所介護の利用料とは別に、施設経由または事業者から区分して請求される
手続きの主体家族が事業者と直接やり取りする施設・ケアマネジャー・事業者の三者で調整が必要

在宅での依頼は、家族の意向を細かく伝えやすく、日程の融通も利きやすいという利点があります。一方でデイサービス利用日での組み込みは、家族の付き添いの負担を減らせる反面、施設側の体制が整っていなければ利用できません。

実際には、普段はデイサービスの利用日に合わせて依頼しつつ、行事の前など特別なタイミングだけ在宅で個別に依頼する、という併用の仕方をしている家庭もあります。季節や行事に合わせたタイミングの考え方は敬老の日・お盆に向けて訪問理美容を準備するタイミングと確認事項でも触れています。どちらか一方に絞り込む必要はなく、そのときどきの事情に合わせて選べることを知っておくと、選択の幅が広がります。

まとめ|この記事で持ち帰れること

この記事を読んで、次のことが判断できるようになったはずです。

  • デイサービスの利用日に訪問理美容を組み合わせること自体は可能で、通所介護をいったん中断し、保険外サービスとして提供する、という制度上の位置づけを理解できました。
  • ケアマネジャーへの報告・利用者への説明と同意・費用の区分請求という、施設側に求められる手続きの全体像が分かりました。
  • 在宅での訪問とデイサービス利用日での訪問、それぞれのメリットを踏まえて、自分たちの状況に合う依頼の仕方を考えられるようになりました。

まずは、通所しているデイサービスに「訪問理美容の受け入れ実績はありますか」と聞いてみるところから始めてみてください。対応実績があれば、その施設の運用ルールに沿って進められますし、実績がなくても、この記事で紹介した厚生労働省の通知の考え方を伝えることで、施設側の検討材料になります。

介護りびようさーちでは、施設への出張実績がある事業者も、営業エリアや施術メニューから検索できます。デイサービスでの導入を検討している施設のご担当者は、施設が出張美容室を導入するまでの流れもあわせてご覧ください。ご不明な点があれば、お問い合わせからご相談ください。