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医療的ケア(酸素療法・経管栄養等)がある方への対応可否の確認

Published
作成日: 2026年7月6日
Updated
最終更新日: 2026年7月7日

酸素療法や経管栄養がある方が訪問理美容を利用する際の対応可否の確認手順を、厚労省通知や届出制度の一次情報に基づき解説。

01結論:医療的ケアがある方も、事前確認をすれば訪問理美容を利用できる場合が多い

酸素療法や経管栄養などの医療的ケアを受けている方でも、施術そのものは医行為ではないため、事前に事業者・医療職と確認すれば訪問理美容・出張美容を利用できるケースが多くあります。ただし「医療的ケアの管理」自体は理美容師の業務範囲外であり、対応可否は事業者ごとの方針とその日の体調によって変わります。この記事では、何を・誰に・どの順番で確認すればよいかを具体的に整理します。

前提として、理美容師(理容師免許・美容師免許保有者)は医療職ではありません。酸素マスクの着脱、経管栄養チューブへの対応など、医療行為そのもの、あるいは医療行為に近い判断が必要な行為は理美容師の業務範囲外です。「対応できるかどうか」は、医療的ケアの管理主体である医療機関・訪問看護・ご家族との事前確認を前提に、事業者ごとに判断されます。

02そもそも「医行為」と「医行為でない行為」の境界はどこにあるか

厚生労働省は令和4年12月1日付の通知(医政発1201第4号「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」)で、経管栄養や在宅酸素療法に関する行為のうち、どこまでが医行為に該当しないかを整理しています。

代表的な整理は次のとおりです。

医療的ケアの種類医行為でないとされる範囲(通知の整理)医行為として医療職が担う範囲
経管栄養栄養剤等を注入する行為・注入を停止する行為を除く準備と片付け/あらかじめ明示された位置への経鼻チューブ固定テープの再貼付注入行為そのもの、チューブの位置確認、胃ろう・腸ろうの状態確認
在宅酸素療法あらかじめ医師が指示した流量設定の確認、酸素が流れていない状態でのマスク・カニューレの装着準備、離脱後の片付け、加湿瓶の蒸留水交換や機器の拭き取りなどの環境整備流量の変更判断、装着状態の医学的な観察・判断

この通知はもともと介護職員等を対象にした整理であり、理美容師を対象にしたものではありません。理美容師がこの「医行為でない範囲」の作業を代わりに行ってよい、という意味ではない点に注意してください。記事の結論としては、酸素マスクやカニューレ、経管栄養のチューブに理美容師が直接触れる場面は基本的に避け、必要な着脱・調整は看護師・ご家族など医療的ケアの担当者に任せる、という運用が実務上の目安になります。

03施術前に確認すべき3つのポイント

訪問理美容・出張美容を申し込む前に、次の3点を整理しておくと事業者とのやり取りがスムーズになります。

  1. 医療的ケアの種類と管理者:在宅酸素療法か、経管栄養(経鼻・胃ろう・腸ろう)か、その他(人工呼吸器、痰吸引等)か。日常的に管理しているのは訪問看護師か、ご家族か。
  2. 施術中に一時的な対応が必要になる場面の想定:カットやシャンプーの際に酸素マスク・カニューレの位置がずれる可能性があるか、体位変換が必要か。
  3. 緊急時の連絡先:施術中に体調変化があった場合に連絡する訪問看護ステーション・かかりつけ医・ご家族の連絡先。

これらは、電話やお問い合わせフォームでの初回相談時に事業者へ伝えることで、対応可能かどうかの判断材料になります。当日になって初めて医療的ケアの状況を伝えると、事業者側が準備不足のまま訪問することになり、結果として施術を見合わせざるを得なくなる場合もあります。

医療的ケアがある方の施術前3つの確認

04誰に確認すればよいか:家族・ケアマネジャー・訪問看護師との役割分担

医療的ケアがある方の訪問理美容は、理美容師・ご家族・ケアマネジャー・訪問看護師の間で情報と役割を分担して進めるのが実務上の基本形です。

  • ご家族・ご本人:医療的ケアの内容、当日の体調、施術中に希望する体位や姿勢を事業者に伝える。
  • ケアマネジャー:他の訪問系サービス(訪問看護・訪問介護)とのスケジュール調整、事業者選びの相談窓口。
  • 訪問看護師:酸素マスクの一時的な取り外し可否、経管栄養の注入タイミングとの兼ね合いなど、医学的な判断が必要な部分の助言・指示。

理美容事業者は、酸素マスクを外してよいかどうか、経管栄養の注入中は施術を避けるべきかどうかといった医学的な判断はできません。判断が必要な場面では、必ず主治医・訪問看護師の指示を確認してから施術を行う(あるいは日程・内容を調整する)流れになります。訪問看護と訪問理美容の日程が近い場合は、看護師の訪問時間の前後に合わせて施術時間を調整すると、状態確認をした直後に施術できるため安心材料になります。

05出張理美容の届出制度と医療的ケア対応の関係

出張理容・出張美容は、理容師法・美容師法上「疾病その他の理由により理容所・美容所に来ることができない者」への訪問を認める「特別の事情」の一つとして位置づけられています(理容師法施行規則・美容師法施行規則)。神奈川県・千葉県などの自治体案内では、医師から自宅安静を指示されている場合などがこの特別の事情の例として挙げられており、医療的ケアが必要な方への訪問自体は制度上想定された利用形態です。

ただし、出張理美容を行う際の届出義務の有無は自治体によって運用が異なります。神奈川県・千葉県は届出を求めていない一方、群馬県は保健福祉事務所への事前届出を求める案内を出しています。事業者が適切な届出・衛生管理(年1回以上の健康診断、伝染性疾患がある場合の施術禁止等)を行っているかどうかは、事業者選びの際に確認しておくとよいポイントです。医療的ケアがある方は感染症へのリスクも相対的に高くなりやすいため、この衛生管理体制の確認は特に重要です。

06フットケア・メイクセラピーなど民間資格スタッフの場合の注意点

フットケア指導士などの民間資格は、フットケアの実践知識を習得する認定制度として医学系の学会と連携して設計されていますが、資格自体が医療的ケアがある方への対応可否を明文化しているわけではありません。メイクセラピー(化粧療法)についても同様です。

まず明確にしておきたいのは、糖尿病性足病変など医療処置が必要な状態の爪・皮膚のケアは医行為であり、訪問理美容・出張美容の対応事業者による施術の対象外だという点です。フットケア指導士等の民間資格を持つスタッフが在籍していても、その資格や事業者との連携の有無によって医療的フットケアそのものを代わりに行えるようになるわけではありません。皮膚の潰瘍・壊死、感染兆候がある、爪切りだけでも出血・悪化のリスクがあるといった状態は、フットケア外来(医療機関)や皮膚科、訪問看護へご相談ください。

そのうえで、健康な爪・皮膚に対する角質ケアや保湿など非医療的なフットケアと、医療的な管理が必要な状態との境界がわかりにくいグレーゾーンの方も少なくありません。「自分の状態がどちらに当たるか分からない」という場合は、申し込み前に事業者へ具体的な症状(糖尿病の有無、傷や変色の有無、痛みの有無など)を伝えて対応可否を確認してください。日頃から医療機関・訪問看護と連携している事業者であれば、施術可否の判断や医療機関への相談タイミングについて、より的確な案内を受けられる場合があります。メイクセラピーについても同様に、皮膚疾患の治療を伴う状態は対象外とし、皮膚科等への相談を優先してください。

07在宅酸素療法中の施術環境:火気・ドライヤーに関する注意点

在宅酸素療法中の方が訪問理美容を利用する際は、施術内容の確認に加えて「施術環境の安全確保」も事前確認のポイントになります。厚生労働省は平成22年1月15日付の注意喚起(医政指発0115第1号ほか「在宅酸素療法における火気の取扱いについて」)で、酸素濃縮装置等の使用中は装置の周囲2メートル以内に火気を置かないこと、酸素吸入中は絶対に喫煙しないことを呼びかけています。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の患者向けQ&Aでも、たばこのほか仏壇の線香・ろうそく、ガスコンロやストーブが実際の火災事例の火元として挙げられています。

訪問理美容との関係で特に確認したいのが、ドライヤーやヘアアイロンの扱いです。厚労省通知やPMDAのQ&Aが直接対象としているのは「火気」(炎)ですが、医療機関の患者向け情報では、ドライヤーなど高温になる機器を酸素吸入中に近づけないよう案内している例があります(慶應義塾大学病院の医療・健康情報サイトKOMPASなど)。使用の可否や確保すべき距離は、使用中の酸素供給機器の取扱説明書と主治医・訪問看護師の指示によって変わります。申し込みの際は「在宅酸素を使用していること」「ドライヤーを使う工程を含めてよいか」を、事業者と医療職の双方に確認してください。

判断に迷う場合の現実的な選択肢としては、ドライヤーを使わないカット中心のメニューに調整する、施術中の酸素の扱い(カニューレの位置調整や一時的な離脱の可否)を事前に訪問看護師へ確認しておく、といった方法があります。また、施術スペースの確保も大切です。酸素濃縮装置や延長チューブの配置を考慮したうえで、椅子や車いすをどこに置くか、コンセントの位置はどうかを事前に事業者へ伝えておくと、当日の設営がスムーズになります。

08たんの吸引・人工呼吸器がある場合:喀痰吸引等制度との関係

たんの吸引(喀痰吸引)や経管栄養は、医療職以外なら誰でも行えるという行為ではありません。平成24年4月施行の社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正により、介護福祉士や介護職員等がたんの吸引・経管栄養を行うには、喀痰吸引等研修を修了して都道府県から「認定特定行為業務従事者認定証」の交付を受け、かつ登録を受けた事業者に所属していることが条件とされています(厚生労働省「喀痰吸引等の制度について」、東京都福祉局の案内等)。介護のプロであっても研修と認定が必要とされる行為であり、理美容師がこの制度の対象になることはありません。

したがって、施術中にたんの吸引が必要になる可能性がある方は、吸引を行える人(訪問看護師、研修修了済みの介護職員、日常的に吸引を担っているご家族)が同席できる時間帯に施術を設定するのが基本です。訪問看護や訪問介護の訪問時間と近い時間帯に組む、吸引を済ませた直後を選ぶなど、ケアマネジャーを交えたスケジュール調整が有効です。

人工呼吸器を使用している方の場合は、切った毛髪が機器の吸気口や回路の周辺に入り込まないような養生(ケープの掛け方、機器からの距離の取り方、こまめな清掃)への配慮も必要になります。人工呼吸器を使用している方への施術経験があるか、毛髪の飛散を抑える施術方法に対応できるかを、申し込み時に事業者へ確認してください。なお、呼吸器の回路の付け外しや設定変更は医師の指示のもとで管理されている医療的ケアです。施術の都合で機器の位置や本人の姿勢を大きく変える必要がある場合は、必ず事前に主治医・訪問看護師へ相談してください。

09自治体の訪問理美容助成制度は医療的ケアがある方も使えるか

訪問理美容の施術費・出張費は介護保険の給付対象外(保険外サービス)ですが、多くの市区町村が高齢者福祉サービスの一環として、訪問理美容の助成事業(利用券の交付等)を実施しています。例えば横浜市の訪問理美容サービス事業は、市内在住の65歳以上で理容所・美容所への来店が困難な在宅の方のうち、要介護4・5の方(または要支援1〜要介護3で福祉保健センター長が必要と認めた方)を対象に、理容師・美容師が居宅を訪問してカットを行うサービスを年6回まで利用できる制度です。神戸市・川崎市・立川市など他の自治体にも同種の事業があり、対象年齢・要介護度・寝たきり度などの要件や利用回数は自治体ごとに異なります。

医療的ケアがある方は要介護度が高いことが多く、こうした助成事業の対象に該当しやすい一方で、注意点が2つあります。第一に、助成事業では自治体に登録・指定された事業者のみが利用対象となっている場合があり、その事業者が酸素療法・経管栄養など医療的ケアのある方への施術に対応できるかどうかは別問題です。「助成の利用条件」は自治体窓口へ、「医療的ケアへの対応可否」は事業者へ、と確認先を分けて問い合わせてください。第二に、横浜市のように「原則として座位を保てること」を要件とする自治体がある一方、寝たきりの方を主な対象とする自治体もあり、身体状態に関する要件の方向性が自治体によって逆の場合すらあります。ご本人の状態が要件に合うかどうかは、募集案内の文面だけで判断せず、窓口に直接確認するのが確実です。

また、65歳未満で医療的ケアがある方(障害福祉サービスを利用している方など)については、高齢者向け事業とは別に障害のある方向けの理美容助成を設けている自治体もあります。高齢者向け事業の対象外だった場合も、ケアマネジャーや相談支援専門員、自治体の障害福祉窓口に確認してみる価値があります。

FAQ

このガイドのよくある質問

多くの場合、事前に事業者へ酸素療法の状況を伝えれば利用できます。ただし酸素マスク・カニューレの取り外しが必要な場面が想定される場合は、主治医・訪問看護師の指示に従う必要があるため、事前にケアマネジャーや訪問看護師とも相談しておくと安心です。
はい。栄養剤の注入中は体位や姿勢の制約があるため、施術時間は注入タイミングを避けて調整するのが一般的です。訪問前に注入スケジュールを事業者に伝え、施術時間帯を相談してください。
できません。理美容師は医療職ではないため、医療的ケアの管理そのものは業務範囲外です。着脱や注入に関わる判断・対応は、訪問看護師やご家族など医療的ケアの担当者が行う前提で施術の日程・内容を調整してください。
都道府県によって届出の要否が異なります(例:神奈川県・千葉県は届出不要、群馬県は保健福祉事務所への届出を案内)。事業者に届出状況を直接尋ねるか、お住まいの地域の保健所に運用を確認すると確実です。
事業者には年1回以上の健康診断受診や、伝染性疾患がある場合の施術禁止義務があります。医療的ケアがあり感染リスクが高い場合は、事業者の衛生管理体制(消毒方法、スタッフの健康管理)を事前に確認してから依頼してください。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と事業所の資料を確認しながら更新します。

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