施設向け出張美容室とは、理美容師が特別養護老人ホームや有料老人ホームなどに出向き、入居者に理容・美容サービスを提供する仕組みで、来所困難な高齢者向けの制度です。
導入を検討する施設担当者がまず押さえておきたいのは、「行政への届出は施設ではなく理美容師本人が行う」という役割分担です。理容師法・美容師法上、理美容師は原則として理容所・美容所以外の場所で施術できませんが、疾病や要介護状態で来所が困難な人、社会福祉施設等の入所者に対しては、出張理容・出張美容が法令上の例外として認められています。この特例に基づき、多くの自治体では、実際に施術を行う理美容師本人(または所属する理美容所)が、業務を開始する前日までに管轄の保健所へ届出を行う運用となっています。ただし届出の要否・様式・届出先・有効期間の扱いは自治体によって差が大きく、そもそも届出自体を求めていない自治体(一部の特別区など)も存在するため、「全国一律の手続き」と決めつけないことが大切です。
つまり施設側がやるべきことは、保健所への申請書類を用意することではなく、(1)信頼できる事業者を探して選定する、(2)契約条件を確認して合意する、(3)施術に必要な環境(スペース・電源・水回りなど)を整える、(4)利用者・家族への案内と同意確認を行う、という4つの実務です。この分担を誤解したまま「施設が届出をしなければ」と思い込んでしまうと、事業者とのやり取りで手間取ることがあるため、最初に整理しておくことをおすすめします。

